2011年8月1日 

第26話:人の手間という贅沢

本日は『疋田絞り』をご紹介させて頂きます。

疋田絞りは数多い絞り技法の中でその表現の華麗、優雅さは他に類が無く一粒一粒の絞り粒が独特の立体感を持っています。疋田絞りとゆう言葉の語源は「直(ひた)」という言葉からきたものだといわれています。この「直」とゆう言葉は「面」を表し疋田絞りがその繊細な絞り粒を似って模様の面を表現するところからこのように呼ばれたといわれています。

▼最高の贅沢品とされた「総疋田絞」は、振袖ともなるとそこには18~20万粒という気の遠くなるような数の括りが作られます。熟練者でも一日800~1200粒括るのが精一杯です。一反を括るのに1年以上、振袖であれば一年半の時間が必要です。

素材は絹織物が用いられ、現在では京都だけで絞られています。


▼疋田絞りを行う時の材料は「絹の生糸」と「指貫き」です。

指貫は和紙を折りたたんで作った物を用意します。
これは絹糸が細くて強い為指を傷付けることがありますのでこれを防ぐ為に用います。

▼青花でつけた点々の上を一粒ひとつぶ、絹糸で絞って行きます。
粒を1つ爪先でつまみ出して、4つに畳み絹糸を5~7周かけて根本で2回しっかりと結びます。 結ぶとき、糸と紙の指ぬきがはじきあって「ぱちんぱちん」と、大きな音が響きます。

▼糸は切らずにそのまま隣の粒に移ります

▼左が疋田絞りが済んだ生地。右が青花のままの生地。絞り終わると
生地は隙間なくかかった糸の重みでずっしりと重くなります。

▼アップで

▼美しく括られた「疋田絞」は染め上がると均一の大きさの粒が、斜め45°の角度で正確に並びます。極めて精緻ではあっても機械仕事のような完璧さではありません。計測できないほどかすかなぶれが手仕事ならではの暖かさや表情を産み出しています。人の手からしか生まれえない美しさがここにあります。

括りは、括る人が変わると出来上がりが変わるため初めから終わりまで一人で括らなければなりません。そのため括り手は健康に気を配ります。健康を損なうと括りの調子が変化してしまいます。また健康状態だけでなく心の揺れさえも映すため、括り手は常に気持ちを落ち着けて作業をするように心がけています。

たばた

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